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整理解雇 〜整理解雇の強い規制と4つの要件について〜

数年前、一部の上場企業が○千人あるいは1万人の人員削減といった新聞記事がよく見受けられましたが、本来の意味でのリストラクチャリング(事業の再構築)から少し異なった意味としてとらえられている感のあるリストラの名のもとに大手企業でも当然のように人員削減(整理解雇)を実行したところです。
しかしながら、大手企業などはいとも簡単に整理解雇していると見られがちですが、決してそのようなことはなく次の要件を十分認識する必要があります。

裁判所は会社の都合による整理解雇については強い規制を加え、

@ 解雇の必要性
A 解雇回避努力義務の履行
B 被解雇者選定の合理性
C 手続、労働者との十分な協議

4要件を満たさなければ認めないとしてきました。
以下に、4要件について個々の具体的事例を見てみます。

解雇の必要性

企業の維持存続が危うい程度(長崎地裁大村支部昭和50年12月24日)というものもありますが、多くの場合、合理的経営者であれば整理解雇を実施することも十分に考えうる程度の経営状態の悪化が認定できればよい(宇都宮地裁平成5年7月20日)と整理解雇が経営困難打開のための唯一の方法までは要求していません。
しかしながらどちらにしても解雇の必要性については企業運営上、やむを得ない客観的必要性が、備わっていることが要件となります。
人員削減後に大幅な賃上げや多くの新規採用を行っているような場合は解雇の必要性なしと考えられます。

解雇回避努力義務の履行

人員削減の手段として新規採用の一時中止、出向、一時帰休、希望退職者の募集等により回避努力が必要です(最高裁昭和58年10月27日)。
これを怠っていきなり整理解雇に及びますと権利濫用として解雇無効の判決が下る可能性が高いと考えられます。
ただ回避努力の程度についても、あらゆる努力が必要(最高裁昭和58年10月27日)とするものから合理的な経営上の努力を尽くすことで足りる(福岡地裁小倉支部昭和50年3月31日)までさまざまで、これは個々の事例ごとに解雇を回避するためどんな方策が可能であったかによると考えられます。

被解雇者選定の合理性

もちろん性別による差別などがあったときは無効となります。
合理的な基準とは例えば、欠勤・遅刻の回数、規則の違反歴、扶養家族の無い者等です(東京地裁平成2年9月25日等)。
問題は、パートタイマーなどの非正規労働者を優先的に解雇できるかですが、これについては原則として合理性ありとしています(東京高裁昭和55年12月6日)。但し、たとえ名目的にはパートタイマーであっても実質的には、正社員と何ら変わりのない者、すなわち労働時間、期間の定めのない雇用契約等のパートタイマーであればその実態に則して判断されます。
パートタイマーであっても実態が基幹的な労働者となっているときは正社員と同じと判断され、この場合には、たとえ名目が非正規労働者であってもこれらの者を優先的に解雇したときは解雇無効となるおそれがあります。

手続、労働者との十分な協議

当該者並びに労働組合と協議し、納得を得られる努力が必要となります。
また、整理解雇に及ぶ場合等、万が一の場合の対応策として就業規則にはその旨記載しておく必要があります。

整理解雇は労働者に責任のない解雇ですので、労働者の不利益が大変大きいものとなります。
従って各裁判所はこの整理解雇を厳しく制限し、4要件を満たすことを条件としてきました。
今後やむを得ず整理解雇を行う企業は、こういった点に留意し、できうる限り合理性をもった対策が必要となります。

トラブル予防のためのポイント

産業界からは、産業構造の変動の中、終身雇用制度が崩壊状態であるにもかかわらず、終身雇用維持に重点をおいた法理の適用は問題だとの声が強まってきました。また学界からも衰退部門に労働者を滞留させ、労働力を必要とする産業への移動を妨げる結果となっているとの認識を示しています。
このような状況の中で、平成11年1月29日東京地裁は、従来の4要件に反旗を翻しました。
すなわち、

@ 雇用契約解消の合理性
A 雇用契約解消後の労働者の生活維持に対する配慮
B 解雇手続

の3つの要件が充足されれば整理解雇に合理性があると判断したのです。
産業界は、これを現実に向かって一歩進んだ判断であると評価しており、今後の裁判に与える影響がどうなっていくのか見守りたいと思います。
しかしながら、たとえこの考え方によっても、合理的な事由及び手続等が大切なのはいうまでも
ありません。
さらにこれまでにも述べましたが、せめて面倒なだけで経費のかからない手続等はしっかりと行い
たいものです。たとえ裁判沙汰となっても最小限度の支出で抑えられる、企業イメージダウンを免
れる、企業のリスクマネジメントが求められています。

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