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解雇 〜使用者の解雇権行使の合理的理由の重要性について〜

企業に労働者として雇用されるということは、使用者と労働者の間で労働契約を締結したことになります。そうすると雇用契約の期間の定めがない労働契約は、民法の原則によりいつでも、どちらからでも解約の申込ができ2週間後にその労働契約は終了することとなります。言い換えると、期間の定めのない労働者の場合、企業はいつでも2週間の予告期間をおけば解雇できるということになるわけですが、これを認めると労働者の生活に多大な影響を及ぼし、国民生活が大変不安定になります。

そこで裁判所は、使用者の解雇権の行使は、それが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することができないときは、権利の濫用として無効となると制限しています(最高裁昭和50年4月25日)。すなわち、解雇が有効となるためには合理的理由が必要です。
ここではその合理的理由についてこれまでの判例をもとに考えてみます。

営業成績不良

営業職には多かれ少なかれノルマがある企業が多いと思われますが、この営業職の営業成績が不良である場合、これを理由に解雇ができるかといった問題です。
この場合は一般労働者と営業部長等の肩書きでその目的を達成するために採用された労働者(例えばヘッドハンティングで雇用した労働者)とでは全く違った考え方となります。
一般労働者の場合、営業成績が不良というだけの理由で解雇することは困難と考えられます。
なぜなら一般労働者の場合、採用時においてその労働者の職務遂行能力について合意していたとは考えにくいからです。また、使用者としても教育訓練等をして指導すべきですし、仮に指導しても成果が上がらなければ適材適所による配置転換も考慮しなければなりません。従って原則的な考え方として一般労働者の場合、営業成績不良による解雇はできません。ただ、勤務態度の不良あるいは意欲の不足が原因で営業成績が不良の場合で、かつ何度か注意しても改めないような場合には解雇も可能と考えられます。

これに対し、営業部長等の肩書きでその目的を達成するために採用された労働者の場合は全く違ったものとなります。この場合使用者はその労働者を採用するにあたり、それまでの実績等をもとに即戦力と期待して採用し、一般労働者に比べ賃金も高額と考えられます。従ってその目的が達成できないような場合、一般労働者と異なり、解雇は可能と考えられます。(東京地裁昭和57年2月25日)

トラブル予防のためのポイント

ここで注意していただきたいのは、こういった目的を達成するために採用された労働者を雇用する場合には、労働契約締結時に、具体的な職務内容、成績等を明示しておく必要があります。できれば契約書にその職務内容等を具体的に記載し、その労働者にその方を採用する目的、期待する能力及びその程度をしっかりと伝えて下さい。
大企業で実績を残した退職者を中小企業で目的を達成するために採用する場合があります。ただ、予想通りの結果が出ていない場合も多いと聞きます。大企業で育ってきた環境と中小企業の環境とのギャップがあまりに大きいのでしょうか。従って労働紛争予防の面からもこういった方を採用する場合には、本人と十分な時間をかけて目的、職務内容等を話し合う必要があります。

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