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懲戒処分 〜懲戒処分と就業規則との関係について〜

一般的に、懲戒処分には戒告、減給、降格、出勤停止、懲戒解雇等がありますが、会社が懲戒処分を行うためには、就業規則に懲戒処分事由と手段を規定する必要があり、原則として「就業規則」等がないと懲戒処分はできないということになります。

ただ、就業規則に懲戒事由を記載すれば、そのすべてが認められるわけではありません。
懲戒処分の正当性は、

@何を根拠に
Aどんな行為が
B懲戒の内容
C手続

以上、4つの条件をクリアして満足されるものとなります(最高裁昭和58年9月8日)。
ただ、どのような行為にどの処分が相当かという法定基準は存在しません。
これらの相当性については個別に判断することとなります。
以下にその例を示します。

無断欠勤

無断欠勤を理由として懲戒処分をする場合でも、就業規則にその旨記載が必要なのはこれまでにも述べたとおりです。よくある就業規則記載の懲戒解雇理由として、正当な理由なく、継続して無届欠勤が7日以上に及ぶ場合というのがありますが、仮にこれを無届欠勤(1日)をした場合と就業規則に記載すればこの規定は無効と考えられます。なぜなら、懲戒解雇事由となるのは正当な理由がなく欠勤した場合でかつ会社側からの出勤督促に応じない又は何度か注意したがそれでも労働者が改めないといった場合に限られると考えられているからです。(普通解雇問題は別途検討する必要があります。)
従ってこの場合、懲戒解雇とすることは不可能と考えられますが、仮に継続して無届欠勤が7日以上に及ぶ場合であってもこれによって会社にどのような影響があったか、会社にどのような損害が発生したかなどの事情を、考慮して判断するべきです。

経歴詐称

経歴詐称については昭和60年10月7日東京地裁が判決の中で、懲戒処分の対象となる重大な理由との認識を示し、この場合の懲戒解雇を有効としています。しかしながらすべての経歴詐称が、懲戒解雇の理由となるわけではなく、労働契約を継続することができないような重要な詐称に限るというのが一般的な考え方です。
すなわち、その従業員を採用するか否かを会社が判断するに当り、その経歴が重要な要素(学歴、犯罪歴等)で、労働力を評価しまたは企業の秩序を維持するため必要な時に限り懲戒解雇は有効になるということです。(東京地裁昭和60年5月24日)
例えば、人材募集の際に学歴不問としていた場合、たとえ学歴に対して経歴詐称があってもこれが原因で懲戒解雇処分はできないこととなります。(名古屋高裁昭和55年12月4日)

勤務態度不良

上司の指示に従わない・上司が何度注意しても態度が改まらない等の勤務態度不良は、これだけでは債務不履行(従業員は賃金をもらう代わりにきちんと仕事をするという債務を履行していない)の問題であり、懲戒理由となりません。これが懲戒事由となるためには会社の秩序を乱した等の場合に限られます(最高裁昭和49年2月28日)。

この判決で述べている会社の秩序の考え方は、

@ 従業員は会社秩序の維持・確保を図るべき義務を負担する。
A その維持・確保は、通常は職場内又は職務遂行に関係ある場所を対象とする。
B しかしながらたとえ職場外の行為であっても企業の社会的評価の低下・毀損を及ぼすものは企業秩序を乱すものとして規制できる。

としています。
従って使用者は、就業規則の服務規程には考えられる項目を整理して職場秩序が侵されないよう検
討する必要があります。

私的行為

・不倫
職場における従業員同士の私的行為である不倫に対して企業が懲戒処分をなしうるかですが、私的行為を理由とする懲戒処分は認められません。
ただ、この私的行為(不倫)により職場の風紀・秩序を乱した場合、懲戒解雇が認められる場合があります(東京高裁昭和41年7月30日)。例えば、その行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合は懲戒解雇が認められます。(最高裁昭和49年2月28日)。

しかしながら多数ある私的行為(不倫)の下級審判決では一貫した結論は出ていません(例えば、旭川地裁平成元年12月27日)。従って、こういった場合は職場の風紀・秩序を乱したことにより相当重大な影響が出た場合に限られると解されています。

但し、この種の判例が多い観光バス会社の事案についてみると、多くは懲戒解雇が認められています(長野地裁昭和45年3月24日)。
これは観光バス事業における特殊性によるものと考えられます。

・喧嘩
会社からの帰宅途中に酒を飲んで喧嘩をし、警察沙汰となったといったような場合です。
前事例と同じように、就業時間外のことについて、原則として懲戒処分が適用されることはありません。しかしながら、終業時間外での行為が著しく会社の対面を汚し、名誉、信用を失墜させた場合、懲戒処分は認められます。(最高裁昭和49年3月15日)

そこで、服務規程には、著しく会社の対面を汚し、名誉、信用を失墜させないこと等の規定が必要となります。

トラブル予防のためのポイント

こんな場合はこの懲戒処分が有効といった明確なものはありませんが、少なくとも企業担当者としては、就業規則の周知徹底、労働者代表との三六協定の締結・労基署への届出等法令記載事項の実行、また懲戒事由に該当すると考えられる場合、その文書化等々、それらの手続を確実に行うことが結果として企業に多大な損害を及ぼさないことになります。

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