労働基準監督署の調査対策

労働基準監督官は突然やって来ます

過重労働による健康障害の防止、労働条件適正化および長時間労働抑制などの目的のため、何の前触れもなく、労働基準監督署の監督官は調査にやって来ます。

会社側からは、調査を拒否できないのかとのご質問を受けることがありますが、残念ながらできません。法令上、労働基準監督署の監督官には、強制的に会社に立ち入り調査(臨検)をする強い権限が与えられているからです。更に法違反が悪質な場合、送検することができる権限もあります。一般的に、経営者にとって「強い権限を持っている」という概念では税務署があげられますが、その税務署と同様に労働基準監督署も強い権限を持っています。

この労働基準監督署の調査を軽く考えてはダメです。その対応次第では、会社存続の危機となる場合もあります。事実京都管内だけでも毎年20〜30件程度の書類送検(会社、代表者または両者を検察に書類送検)事例があります。(表1・表2)

調査内容は、労働基準法などに関する違反の有無です。京都においても7割以上もの会社で法違反が指摘され、是正勧告が出されています。その中でも多い違反は、労働時間、割増賃金、安全基準などですが、どちらにしても調査に入られてからでは打つ手が限られます

日頃から、これら是正勧告を受けないように、対策を講じる必要があります。

また最近は、景気悪化のためか、退職した元社員の申告により、労働基準監督署の調査が増加しています。こういった場合にも対応できるよう日頃から、対策を講じる必要があります。

当事務所は、労働基準監督署調査の立会い、是正勧告の対応および改善策まで、会社の立場でお手伝いさせていただきます。

労働基準監督署の調査が増加している背景

元社員のうつ病による自殺と長時間労働に因果関係が認められ、会社が遺族に多額の金銭を賠償した電通事件などを契機に、会社の社員に対する健康配慮義務違反を理由とする損害賠償支払を命じる判決が多発しました。これらは長時間労働や未払賃金(残業代不払)を原因としていることから、労働法令遵守を掌る労働基準監督署が長時間労働またはサービス残業の取締りを強化しました。(表3)

また、近年の景気悪化のためか、会社を辞めた社員が過去の残業代未払などを労働基準監督署に申告するケース、あるいは現社員が労働基準監督署に内部告発するケースが急増しています。労働基準監督署としても社員あるいはその家族などからの申告・内部告発などがあった場合にはすみやかに対応しているようです。こういった背景により、労働基準監督署の調査が増加しています。

労働基準監督署の調査は4 種類です。

定期監督 労働災害発生状況、遵法状況などの分析結果から、年度ごとに、重点業種、重点項目を決定し、計画にしたがって行います。
申告監督 社員、その家族または退職者から、残業代未払、解雇、セクハラ・パワハラなどに関して労働基準監督署に告発あったときに、その内容を調査するために行います。
災害時監督 大きな労働災害が発生した場合に、その災害の実態を確認するために行う調査をいいます。
再監督 過去に是正勧告を行った会社にふたたび訪れて、是正箇所を確認する。または指定期日までに是正報告書が提出されない場合や事業所の対応が悪質である場合などに再度行なわれる調査です。

是正勧告

時間外労働に関する労使協定を締結および届出していないにも関わらず、労働者に時間外労働を行わせていること
労働者に対し、2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払っていないこと(平成○年○月分賃金から再度正確な割増賃金を計算し、遡及して支払うこと)
常時50人以上の労働者を使用する事業場であるのに、産業医および衛生管理者を選任していないこと
労働者に対し、定期健康診断が実施されていないこと

労働基準監督署の調査があり、よく見かける是正勧告を求められる内容は上記の通りです。このような指導を受けた場合、会社は大変な労力を必要とします。このような是正指導を受けないよう、普段から対策を講じておく必要があります。決して人ごとではありません。

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表1

京都労働局管内における定期監督における法違反の状況

表2

京都労働局管内における送検回数の状況

表3 最高裁判例要旨(最高裁判所HPより抜粋)
事件番号 平成10(オ)217
裁判年月日 平成12年03月24日
法廷名 第二小法廷
事件名 損害賠償請求事件
判示事項 一 長時間にわたる残業を恒常的に伴う業務に従事していた労働者がうつ病にり患し自殺した場合に使用者の民法715条に基づく損害賠償責任が肯定された事例
二 業務の負担が過重であることを原因として心身に生じた損害につき労働者がする不法行為に基づく賠償請求において使用者の賠償額を決定するに当たり右労働者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等をしんしゃくすることの可否
裁判要旨 一 大手広告代理店に勤務する労働者甲が長時間にわたり残業を行う状態を一年余り継続した後にうつ病にり患し自殺した場合において、甲は、業務を所定の期限までに完了させるべきものとする一般的、包括的な指揮又は命令の下にその遂行に当たっていたため、継続的に長時間にわたる残業を行わざるを得ない状態になっていたものであって、甲の上司は、甲が業務遂行のために徹夜までする状態にあることを認識し、その健康状態が悪化していることに気付いていながら、甲に対して業務を所定の期限内に遂行すべきことを前提に時間の配分につき指導を行ったのみで、その業務の量等を適切に調整するための措置を採らず、その結果、甲は、心身共に疲労困ぱいした状態となり、それが誘因となってうつ病にり患し、うつ状態が深まって衝動的、突発的に自殺するに至ったなど判示の事情の下においては、使用者は、民法715条に基づき、甲の死亡による損害を賠償する責任を負う。
二 業務の負担が過重であることを原因として労働者の心身に生じた損害の発生又は拡大に右労働者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が寄与した場合において、右性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでないときは、右損害につき使用者が賠償すべき額を決定するに当たり、右性格等を、民法722条2項の類推適用により右労働者の心因的要因としてしんしゃくすることはできない。