万一、過労死事故が発生すれば、企業は遺族から莫大な損害賠償請求を受ける恐れがありますが、その労災過労死認定基準が9月から改定(緩和)されています。
そして、労災認定(過労死)と行政機関に認定されれば、民事訴訟にも大きな影響を及ぼします。
2022年、京都の工場で発生した事故です。
改定された、脳・心臓疾患認定基準(過労死認定の判断基準)の運用で、労働基準監督署は、いわゆる過労死ラインとされている、2箇月〜6箇月平均月80時間以上の残業の基準を満たさない月平均77時間でしたが労災(過労死)認定しました。
事件の概要は、会社で働いていた整備士が、急性心不全で死亡しましたが、当初、労働基準監督署は残業が月平均80時間に満たないなどとして労災認定しませんでした。
これに対し遺族が提訴したところ、労働基準監督署は判決が出る前に、昨年9月改定の脳・心臓疾患認定基準に基づき労災認定しました。
残業(休日出勤含む)が月平均80時間以上という、いわゆる過労死ラインのみを重視せず、労働環境も、より慎重に考慮するという改正された新基準に基づき判断されたようです。
この事件で重要視された労働環境とは、
1.不規則な深夜勤務があったこと。
2.空調設備のない高温多湿の作業場で働いていたこと。
が主な原因とされています。
今後、このように月平均残業時間が80時間に満たなくても、労働環境が悪ければ、過労死認定される場合が増加すると思われます。
残業時間だけでなく、労働環境整備も必須となります。
上記以外の悪い労働環境とは、例えば、
1.連続勤務
2.勤務間インターバル(会社から帰宅し、翌日勤務するまでの時間)が短い
3.拘束時間が長い
4.出張が多い
5.発症前1週間に継続して深夜時間に及ぶ残業を行うなど過度の長時間労働
6.パワハラなどを受けていた
7.達成困難なノルマがあった
などです。
極論すると、これまでは80時間以上か否かが、過労死認定されるか否かとイコールではないかと思えるような認定状況でしたが、今後は残業が45時間を超える方については、このような労働環境も考慮する必要があります。